2011 UCIパラサイクリングトラック世界選手権

レース直前 大震災の報 動揺・不安を抑えて世界で闘った



 今大会参加にあたりまして、ご支援ご声援頂きました関係者の皆様、ありがとうございました。 厚く御礼申し上げます。 これからも何卒よろしくお願い申し上げます。

 日本障害者自転車協会理事 チームリーダー 権丈泰巳

 2011UCIパラサイクリングトラック世界選手権は当初前年8月にコロンビア・カリでのロードトラック一括開催だったが変更になり、トラックは2011年3月イタリア・モンテキアリでの開催。
 今年はロンドン大会に向けてのポイント争いが正念場となる。日本もナショナルチームを編成、合宿を行ってこの大会に挑んだ。 今大会には 藤田征樹(C3,チームチェブロ/日立建機) 石井雅史(C4,チームスキップ/藤沢みらい創造)、大城竜之(B,チームチェブロ/文京盲学校)・伊藤保文(パイロット、日本競輪選手会京都支部)ペア、阿部学宏(C5、スペードエース/銚子屋本店) の5名の選手が派遣された。

 日本チームは3月7日に成田を出発。 便の決定や機材の輸送方法と料金についてはギリギリまでもめた。 結局、行きについては、リーダーの権丈のみがミュンヘンから機材と共に陸路で、他の選手団はミュンヘンからミラノ、そこから車で現地入り、という長旅になった。リーダー権丈にとっては過酷な移動になるが、予想よりも早く到着。みんなホッとした。 日本からのスタッフに加えて、現地では沖コーチやトレーナーが合流。
 到着が深夜になり、翌日は少しゆっくり休んでから機材移動・セットアップそして公式練習を3日間行い、大会に挑んだ。


会場となったモンテキアリのベロドローム 昨年8月ジュニア世界選が行われたところ

3月11日(金)1日目
大震災のニュースを聞いて・・ 藤田が健闘6位 あと一歩及ばず

 男子C3個人追い抜きに出場した藤田征樹(チームチェブロ・日立建機)は、北京で出した自己ベストにほぼ同じの3分52秒853をマークしたが6位だった。このクラス予選上位3名はいずれもイギリス。1位のDarren KENNY は予選3分41秒075、最初の1キロは1分12秒台。金メダルマッチでも同僚を破って優勝。予選タイム通り金銀銅をイギリスが独占した。ロンドン大会に向けて、イギリスの圧倒的力はますます増大しているようだ。 それでも藤田は3位決定戦(4着権利)まであと2秒弱、惜しい結果だった。3位決定戦でイギリスのWADDONが出したタイムは3分49秒559で、藤田には射程圏だったかもしれず、あと一歩足りず残念。
 男子C4の石井雅史(チームスキップ・藤沢市みらい創造)は1年半前のロード世界選での落車・瀕死の重傷から世界トップの大会に復帰。あの現場からは150キロほどしか離れていない。しかしやはりあの怪我(骨折10数か所、肺の損傷など)の影響は大きかったのか、まだまだベストの状態には遠いようで、5分8秒285で11位に終わった。優勝したチェコのJiri JEZEKの予選でのタイムは4分41秒895。このJEZEKと銅メダルを獲得したNOVAK(ルーマニア)はUCIコンチネンタルチームに所属し、UCIエリートのステージレースなどで入賞など大活躍しているエリート中のエリート。NOVAKは09年エリートロード世界選(RTT)にも出場している。
 男子C5の阿部学宏(スペードエース・銚子屋本店)は5分11秒673で自己ベストを大きく更新した。努力の成果だ。しかしこのクラスも強豪ぞろいで、特に中長距離には秀でた選手が多く、その中での順位は21位。優勝したMichael GALLAGHER(豪)もUCIコンチネンタルチームで大活躍中のエリート。予選でマークしたタイムは何と4分37秒230でクラス世界新記録。 銀は4分40秒を予選でマークしている中国の若い選手。銅メダルは初参加ウクライナの選手。 凄まじい脚力と実績のエリートたちだけでなく、若い選手の台頭も目立っているようだ。

 午後のセッションの前には、この日発生した東北地方太平洋沖地震で亡くなられた方々のご冥福を祈り、1分間の黙祷がささげられた。 UCIとオーガナイザーの配慮だった。

 男子Bクラス(視覚障害)1キロタイムトライアルには大城竜之・伊藤保文がこのペアでは初めての世界選出場。 大城も1年半前の合宿での落車・重傷からの世界選復帰だ。 この大会の3週間ほど前にパイロット伊藤が自身のレースで落車し負傷。合宿を1度キャンセルするほどだった。昨年11月にもやはりレースで大きな怪我を負い、厳しい状況だ。それでも前半はまずまずのタイム。しかし後半伸びず、8位に後退。 それでもこの状態で8位に入ったことで手ごたえはつかんだ模様。大城がもっと伊藤パイロットについて行けばさらに伸びるはず。

 藤田と大城はそれぞれポイントを獲得。

 世界トップと若手・新興国の台頭はすさまじい。日本はやはりこのままでは取り残される、と強く危惧する初日結果だ。 多くの真摯で熱意ある自転車関係者の方々にぜひ引っ張っていってほしいと願うばかりだ。

 
また、若い選手(10代20代)の登場がやはり切望される。


藤田(C3)

石井の個人追い抜き(C4)

追い抜く寸前 阿部(C5)

権丈リーダー・班目コーチの指示に聞きいる
大城(後)・伊藤ペア

3月12日(土)2日目
藤田惜しい5位 石井復活の走り 阿部は自己ベスト大幅更新

 2日目の12日、男子各Cクラスの1キロタイムトライアルが行われた。震災の凄まじい被害状況はすでに選手もニュース等を通じて見ていた模様。前日以上に心の動揺・不安はあったかもしれない。

 C3の藤田征樹がこの種目でも健闘。自己ベストを大きく更新する1分14秒087で5位、個抜きに続いて入賞しポイントを獲得。藤田のこのタイムは、旧LC3での北京大会であれば金メダルに値するもの。クラスシステムが変わり、イギリスのエリート並みの選手と同じになり苦しい戦いになったが、3位とは1秒少しの差。屋内250が無いジブシーのような現状、そして仕事との両立に苦しむ中での今回の1キロと個抜きの結果は立派。 優勝はやはりイギリス、KENNYで1分11秒293。このクラスのイギリス勢はすでに年を行っている選手なので、若い藤田に今後も期待だ。

 まだ本格的トレーニングを再開して半年ほどのC4石井雅史はベストには遠く、それでも何とか後半踏ん張り7位、タイムは1分10秒892だった。これから以前のようなトレーニングを積み重ねることで巻き返してくれると期待したい。自己ベストを出していれば銀メダルに近づけた。今回、ライバルの一人チェコのBouscaが自己ベストで3位に入っていたことは刺激になったはず。石井も負けてはいられない。 優勝は圧倒的な世界新記録1分5秒144をマークしたイギリスのCundy。ロンドンではクラス統合になる得意種目の1キロだが、それを見越して今回は個人追い抜きにもエントリーし、見事銀メダル、その分1キロではタイムの後退があるのではと思われたが、それどころかまたもや素晴らしいタイムを出していた。 この日女子C5個人追い抜き(3キロ)で3分36秒台の圧倒的な走りを再び披露した同じイギリスのSarah STOREYのように、エリートカテゴリーで五輪を目指しても良いのでは、と思えるほど。なお、Sarahは先月マンチェスターで行われたエリートトラックワールドカップにおいて団体追い抜きのメンバーとして出場。見事に金メダルに輝いていた。 

 C5の阿部学宏は1分15秒004の自己ベストをマークしたが24位。このクラスもレベルが高く、1分9秒を出しても入賞がやっとというところ。実業団BR1で走る阿部は、トップスピードもかなり上がり、ロードレースでの活躍が期待される。

 藤田、石井、阿部はこれで競技を終了。最終日は大城・伊藤ペアのタンデムスプリントが行われる。


良く健闘した藤田 さらに期待

大怪我から2度目の復活第一歩 石井

選手を支える現地スタッフ

2種目とも大幅自己ベスト 阿部
全選手のフレームには日の丸ステッカー

藤田征樹(C3)

3月13日(日)3日目 メダルならず

 最終日の13日、日本勢は男子タンデムスプリントに大城竜之(チームチェブロ・文京盲学校)・伊藤保文(日本競輪選手会京都支部)ペアが出場。

 予選のハロンでは、10秒828の好タイムをマーク。しかしそれでも5位。トップは元オリンピックイギリス代表のCraig MACLEANがパイロットを務めるペア。何と10秒282、世界新記録だ。2位もイギリスで、KAPPES/STOREYペア、10秒351。
 また、3位はスペインのPORTO LAREO/VILLANUEVA ペアで10秒504。
 MACLEANもVILLANUEVAも3,4年前まではエリートの世界トップクラスとして活躍。日本にもファンが多い。

 準々決勝からはマッチスプリント。5位の大城・伊藤ペアはハロン4位のOOST/BOSペア(オランダ)と対戦。残念ながら2-0で敗退。 最終順位は6位に終わった。

 優勝はイギリスのFACHIE/MACLEANペア。銀メダルはKAPPES/STOREYペアとこの種目もイギリスがワンツーフィニッシュ。この両ペアによる決勝は3本目までもつれ込んだ。MACLEANもSTOREYもパイロットを専門職として生活している模様。

 今回日本勢は残念ながらメダルには届かず。しかし5種目でポイントを獲得。今後につなげることは出来た。怪我から立ち直る過程の選手もまだおり、また、国際規格に合ったバンクが無い中で初めての冬場の国際大会それも世界選手権。そんな中では精いっぱいの走りをしたと言える。

 今後選手にはさらなる地道無練習に精進してほしい。

 なお、翌14日、石井雅史が1年半前の大事故の現場に地元自治体から招待されて向かった。現地では温かく迎えられ、事故現場などを感慨深く見て、あの時出来なかったゴールをした。これで胸のつかえも取れてふっきれたはず。以前のような走りをすることが彼に課せらた任務だろう。


大城・伊藤ペア ハロン

準々決勝に挑んだ大城・伊藤ペア
ホルダーは鬼原メカ

この日で帰国する阿部と藤田が大城ペアを激励

残念ながらここで敗退

大城・伊藤ペア

3月14日、1年半前の激突・大怪我の現場付近を見る石井
(実際にはこの反対側と思われる)
胸のつかえは取れたはず 新たなスタートだ

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