2008北京パラリンピック ロード競技

御礼

北京パラリンピック自転車日本チームへの、多くの皆様からのご支援・ご声援に心から感謝申し上げます。好成績は、皆様からの温かいご支援・叱咤激励の賜物です。苦しいことばかりでしたが、何度も何度も皆様によって支えられてここまでくることが出来ました。本当にありがとうございました。 

自転車の名を高めたい、自転車競技の認知・社会的地位向上に貢献したい、と願ってきましたが、それがいくらかは出来たのでは、と考えます。

これからも、パラサイクリング日本チームを何卒よろしくお願い申し上げます。

日本障害者自転車協会
理事 (強化・国際担当) パラサイクリング部会
栗原 朗

9月12日(金)ロード初日 
TTデー 今度はアベック銅だ

この日から北京パラリンピックはロード競技に。 場所は、北京の中心地からは40キロぐらいだろうか、十三陵という貯水池の周辺コース。 オリンピックのトライアスロンが行われたところとスタートゴールは同じ様子で、ただコースは反対側を走るようだ。1週12キロ少々のコースで、厳しいコーナーや長くいやな上りもいくつかある。また、ゴール手前200メートルほどの所にUターンのようにぐるっと回る箇所がある。ここは毎周回通るところ。パラサイクリングのコースは年々厳しくなっているが、今回が一番厳しいようにも感じる。

この日はロードタイムトライアルデー。暑さは厳しい。気温は32度前後になった模様だ。さらに、風が強い。体温調整が困難な選手や麻痺のある選手などには特に苦しいコンディションになっていたかもしれない。

日本の先陣は、CP1/CP2(脳性まひ第1区分・第2区分)混合ロードタイムトライアルに出場の小川睦彦。CP2にカテゴライズされている小川だが、今大会このクラスの種目はCP1のクラスと統合して行われ、また男女が混合されてひとつのメダル種目として行われる。そのため、障害の重さと男女差を考慮したパーセンテージ係数がTTには適用される。なお係数は、これまでの国際大会での競技結果を元に算出された。過去の例では、障害の重いクラスの選手が係数をあてはめた(つまりタイムを割り引かれた)結果上位に来ることが多く、特にこの種目ではそれが顕著になるのでは、と思われた。

CP2では、またもやイギリスのDavid Stoneが圧倒的な強さを今大会も披露。係数の不利をまったくものともせずに圧勝。昨年イギリスのコーチがDavidは我々のシークレットだといっていたがその強さはさらに増大。誰もかなわず。小川は、タイムだけなら全体の4位だったが、他の選手に係数をあてはめられ8位まで順位を落とされた。しかし、これは想定の範囲内。ロードレースで食いついていってほしい。CP2には毎回新たな選手が出てくるが、今回はイタリアの選手が劇的なレベルアップを成し遂げた模様。4年前とはスピード・技術・スタミナどれをとっても比較にならないほど容易ではなくなっている。

CP4の石井雅史がロードTT(距離24.8キロ)でも快走。粘って3位に食い込み銅メダル獲得。元競輪選手の石井だが、全プロロードで入賞経験があるなど、ロード種目にも特性がある。前を走る選手を次々に捕らえて、36分10秒20でチェコやドイツ(世界チャンピオン)のライバルを振り切った。 自転車が何よりも大好きな石井には、この種目でのメダルもとてもうれしかっただろう。 金メダルはやはり石井のライバルであり友人とも言えるスペインのCeasar Neira。アベレージ41.448キロ。念願の金メダルに何度もガッツポーズをしていた。

LC3クラスのロードTT(距離は同じ)では、藤田征樹も2周目に激しい追い上げで3位に入り、石井とアベックで銅メダルを獲得。タイム38分38秒96。ヨーロッパ勢がこれまで圧倒的に強く歯が立たなかったRTTで石井とともに銅メダルを獲得し、日本チームは大いに沸いた。 藤田はトライアスロンを長く行っており、そこで鍛えた地脚・回転力・テクニック等を存分に生かしての好走。ゴール後はグッタリするほど目一杯の走りだった。 表彰式では満面の笑みとガッツポーズで応えてくれた。 トライアスロンで鍛えた能力はこの競技に大いに役立つことを感じさせてくれた。

この日最後となった、男子視覚障害(B&VI)ロードTTには、大城竜之・高橋仁ペアが登場。これまで、視覚障害タンデムのロード種目はヨーロッパなどの強豪国にまったく歯が立たなかった。しかし、06年にこのペアを結成してからは06年世界選ロードレース6位入賞など、互角に渡り合っている。高橋のテクニックに大城の粘りがうまくミックした形。 ただ、この日のロードTTではタイムは伸びず、14位に終わった。


RTTスタート前の小川

石井、3つ目のメダルへ

藤田も銅メダルへ

上りをひた走る大城・高橋ペア


石井

北京の空に日の丸を ロードでも

藤田

9月13日(土)ロード2日目
小川及ばず4 石井はあと数キロで巻き込まれて

9月13日土曜日、この日は、CP1/CP2混合ロードレース、LC1/LC2/CP4ロードレース、CP3/LC3/LC4ロードレースが行われた。

 CP1/2混合ロードレースに出場した小川睦彦。係数など無いガチンコレースにかけていた。容易ではないレースになることは国内強化合宿の段階からわかっていた。強豪選手はいっそう力を上げてくる。新たな選手も毎回出てきているので、警戒をしていた。その新たな選手は、イタリアから。素晴らしく鍛えられた脚を持つ。南アフリカもやはり強い。イギリスのDavid Stoneは相変わらず桁違い。過去2年負けているオーストリアの選手もいる。

 午前10時5分、レースはスタート。距離は12.1キロx2周で24.2キロ。障害が極めて重いこのクラスでは、これまでで最長の距離。スタートして1キロの長いのぼりでイギリス・イタリア・南アの3名が集団。Stoneの強靭な走りを伊・南アが必死に追う。長い上りは苦手な小川はやや後ろ。その差は徐々に広まる。Stoneを追っていた伊・南アも離されていく。1周目のトップは大きくちぎってStone。かなり離れて南ア・伊。 結局、そのままの順位でゴールしていた。

 小川はおよそ45秒差をつけられて5位で最終周回へ。長いのぼりの後半では6位に後退。このままズルズルいくかと思われた。しかし、長いゴール前エリア直線路に帰ってくると、前を猛追。ラスト200メートルではオーストリアの選手と激しいゴールスプリント。ほぼ同時に4位のゴールへ。写真判定の結果、小川の4位がアナウンスされた。上位3選手がすべての面で非常に強く、残念ながらそこには入れなかったが、過去2年勝てなかったオーストリアの選手に勝ったことは意味がある。

 このクラスは、イギリスのStoneがもはや圧倒的。ゴール前は余裕のパフォーマンスを見せてくれた。後ろ2輪の片側を浮かせて観客席に手を振っていた。こんなことが出来るのは、このクラスでは彼だけだろう。

 午後1時半からは、LC1/LC2/CP4のロードレース。石井雅史(CP4)が出場。4つ目のメダルを狙った。距離は12.1キロx6周で72.6キロ。

 スタートからかなりの高速展開。LCはCPに比べて長い距離を走ることが多い。LCのトップ相手にはなかなか難しい戦いになることは予想された。1周目のラップは17分55秒という予想通りのハイレベル。石井は1周目20人ほどの先頭集団後方に位置。2周目に入り、3選手が抜け出す。遅れて、石井らの集団。3周目最初ののぼりで先頭集団からは20秒ほど離れ、苦しそうという連絡も。しかしそこから流れにうまく乗り、集団に追いついて4ラップ目へ。1名の選手が抜け出そうとするのを数秒差で石井含む大集団。4ラップ目最初ののぼりが心配されたが、ペースが落ちたためか十分ついていっている。スタンドの最上部通路からこの上りが見える。大声で声援を送る。

5周回に入るゴールエリアは集団5,6番手。良い位置だ。上りでも離れない。しかし、やや苦しそうとの連絡も。集団は依然20人ほどだ。この後、スペイン選手が仕掛ける。少しおいて2名。トップから19秒差、2位3位から5秒差の集団に石井はいた。あと1周だ。

 長い上りも順調に通過。やがて、“先頭との差が縮まりました。10秒を切って後の集団が詰めてきています”とのアナウンスが流れる。期待が高まった。

 がしかし、石井は、そのあと、前を行く選手の落車に巻き込まれて転倒、腰などを強打し、残念ながら再乗出来ず、棄権。 石井にとってはきつい上りを何とかしのぎ、良い展開に持ち込める可能性が見えてきただけに残念であったが、全力での走りで、悔いは無い様子だった。 ゆっくりと体を休めて、今後もさらに輝いて欲しい。 なお怪我は、打撲等であり、大事には至っていない。

 石井のレースから5分後、LC3/LC4/CP3ロードレースがスタート。藤田征樹が出場、こちらも4つ目のメダルを狙った。距離は5周で60.5キロ。

 こちらもハイペースでのスタート。ゴールエリア前に帰ってきたときにはやや牽制気味だったが途中のペースがかなり速かったことはラップ17分7秒ほどという数字からもわかる。藤田は先頭の大集団に付けている。2周目のゴール前に来たときには、ペースは落ちていた。しかし3周目にはドイツら3名が抜け出しを計り、それを藤田そして集団が追う。追った藤田が大集団を引き付ける形になり、やがて先頭3名を4ラップ目最初の上りで吸収。その上りでは、先頭集団の2,3番手に付けようと試みる。ペースはやはりスローになっている。このペースなら行けるのでは。

 しかし、最終周回に入るためゴールに戻ってきた時には、スペインとフランスの選手が抜け出し、それを27秒の差で集団が追いかける。藤田はその後方。何とかついていって欲しい。がんばれ!

 残念ながら最終ラップ最初の上りで一杯になったのか、後退していく。 健闘むなしく、藤田は結局19位に終わった。

 交通事故からわずか4年。前向きな好青年はこの大会3つのメダルと貴重な経験を得た。今後に大いに生かして欲しい。

 このレース優勝は、スペインのオチョアとのゴールスプリントを圧勝したD.Kenny。 強すぎる、そう感じた。

 この日の3つのロードレースでは、メダルはならなかったが、この種目でも(しかもクラス統合がなされても)この厳しいコースでも十分ついていけることを3名は証明してくれた。 大きな価値があった。小川、石井、藤田の3選手、本当にお疲れ様!


小川に指示を出す班目監督

連日早朝から深夜までチームをサポートした森メカニックと平松コーチ





惜しくも4位 相手が強かった

9月14日(日)ロード最終日
力を出し切って

9月14日、いよいよ北京パラリンピック自転車競技の最終日。これまでの長く苦しい日々を考えると、あっという間。信じられない思いだ。この日は、午後の最終種目男子視覚障害(タンデム)ロードレースに大城竜之・高橋仁ペアが出場。トラックの最後には、不可解な進行と判定に泣いたが、とにもかくにも気を取り直してロードに挑んでいた。

2年前の世界選では、この種目堂々6位入賞。昨年もあと2周でのアクシデントに泣いたが、それまでは入賞可能な位置に付けていた。彼らには今回難しいコースだが、何とかついて行って欲しい。が、2人乗りタンデムには難儀なコース。何よりも事故が心配された。この日は、前日に比べてかなり蒸し暑い。日差しも強くなってきた。

午後2時スタートのレース、12.1キロを8周の96.8キロ。 初周からポーランドの2番手ペア(と思われる、1番手は2年連続世界チャンピオン)・フランス・フィンランド(ほぼ無名?)がトップ集団を形成。58秒差の大集団には日本ペアの姿もあった。2周目のゴールエリアでも状況は変わらず。ただ、先頭集団も第2集団もゴールエリア付近では牽制気味。その差は1分41秒ほどに広がっていた。 ゴールエリアに来た集団にいる日本を紹介するアナウンスでは、“Japan is very strong in this competition(今大会非常に強い日本)とのアナウンス。すごく誇りに思った。

3ラップ目のゴールエリアでは、トップ集団変わらずも、それに続いて豪ペア。すぐに集団。その中に日本は見当たらない。トップから2分59秒差の第3集団に大城・仁ペアがいた。やはりこのコースは難しいものがあったのか。4周目のゴール付近でも、状況は変わらない。トップ3台と第2集団との差は2分51秒まで広がり、どうもこの3台で決まり、という様相になってきた。2年連続世界チャンピオンのポーランド本命ペアやオーストラリア・ベルギー・スロバキアなどの実績のあるペアからはあせりの色が。そして苦しい表情が。

5周目のゴールエリアを通過し6周回に入っても、同じだ。先頭3台は、5分後スタートの女子タンデムをあっさり追い抜いていく。フランスを除き、昨年までの主要大会では上位にいなかったペア。そのため、強豪ペアたちは楽観して追わなかったのか。第2集団はさすがにペースを上げて追う。その差はわずかに縮まっただけ。間違いなくメダルはポーランド・フランス・フィンランドになりそうだ。

大城・仁ペアは、トップから7分38秒差がついてしまった第4集団に。パイロット高橋仁の首に大城が水をかける。ピット前を通過する際に、仁が手を上げてチームに合図を送る。かなりの蒸し暑さで、苦しい様子だ。

予想通り6周目に入っても大きな流れは変わらず。7周目のゴールエリアでは、後続集団とトップとの差が縮まったことが表示されたが、もはや上位3組は決まりだ。最終周回に入る際、大城ペアは大きく遅れてしまったが、完走は出来るだろう。最後まで悔いの無いよう走って欲しい。スタッフが、レースを終えた他の選手たちが、大声で声援を送る。

そして、ゴールエリアにトップ集団が帰ってきた。過酷な戦いを制したのは、ポーランドの“第2”ペア、Zajac/Flak組。これで3年連続ポーランドがこの種目を制覇。2位はフィンランド。3位フランス。

大城・高橋ペアは、最後2台を抜いて意地を見せ、13位で完走。お疲れ様!

 これですべての競技が終わった。

日本は、金1銀3銅2、計6個のメダルを獲得。これはダントツで過去最高だった。

 記録も良かった。内容の濃い、価値のあるものばかりだった。

選手・スタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした。 敬意を払います。 胸を張ってください。


2年前の再現を願ったが、難コースに苦しんだ

大会最後のレースを終えて お疲れ様

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